島原半島の中で医療と福祉を完結したい
南島原市で開院30年、急性期医療と救急医療を担う医療法人栄和会泉川病院。法人としては「悩める人を癒し、苦痛を和らげ、心を慰め、そして病気の予防を」を経営理念として掲げ、福祉・在宅医療サービスまで提供する。
―理事長・院長就任から3年が経ちました。
医療の充実と経営の安定を両立させる難しさを実感しています。一方で、私が新しく始めたさまざまな取り組みが、やっと実を結びつつあることにも、手応えを感じています。
その一つが私が副院長時代につくった「医療コンシェルジュ」のチームです。現在は看護師、検査技師、介護士、管理職員など、幅広い部署から選抜された約20人が朝7時から病院内を巡回し、各病棟の状況や患者さんの容体、職員の出勤状況などを把握して、全体ミーティングを行っています。
それによって医療事故やインシデントなどの事例をはじめとする病院全体の情報を共有することができ、約400人の職員スタッフに周知徹底することができるようになりました。
―近年、さまざまな最新の医療機器を導入しているそうですね。
2017年の4月に老朽化していた装置を更新して、最新の「血管撮影システム」を導入しました。
この装置は、心筋梗塞や狭心症における心臓カテーテル治療など、ほぼ全身の血管疾病に対する救急医療に使用できます。従来の装置よりも少ないエックス線量で高解像度の画像を描出することができますので、被ばく量も少なく、患者さんへの負担も軽くなります。
今年導入した「体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)」は、体外から衝撃波を当てて結石を砕くことができる装置で、島原半島内で常時稼動しているのは当院だけです。
無麻酔で開腹手術をせずに治療ができるので、入院期間が短く、短期間で職場、日常生活に復帰することができます。
また、最新機器にワキ汗・におい治療器の「ミラドライ」があります。これは「ワキ汗」や「におい」の原因となる汗腺にマイクロ波を照射することで熱によるダメージを与え、汗腺の機能をなくし、においを抑えることができます。この治療は保険適用外ですが、においに悩む若い患者さんは少なくなく、そのニーズに応えています。
―救急医療、急性期医療についても、地域医療を支える存在ですね。
父の時代からそうでしたが、私が院長になってからも救急患者は基本的にすべて受け入れています。島原半島という立地上、他の病院に搬送するには1時間半から2時間という時間がかかる上、夜間はドクターヘリも飛びません。ですから救急医療については24時間365日体制で受け付け、まずは診断した上で他院に搬送するか、当院で処置するかを判断しています。
このような体制を維持するにはスタッフにも負担がかかるのですが、今は私の考え方を理解してくれて、救急に対応できる環境が整ってきました。
当院には災害派遣医療チームもあり、2016年の熊本地震の際には、現地で医療支援活動を行いました。常に準備、訓練を怠らず、いつ起こるかわからない災害にも備えています。
当院は、関連施設として、「介護老人保健施設フォンテ」「訪問看護ステーションあい」「グループホームサンテの丘」「通所リハビリテーション」「指定居宅介護支援事業所ふかえ」を併設し、医療だけでなく福祉・在宅医療サービスを提供する体制も整えています。将来は、島原半島内で医療から福祉介護まで、すべてが完結できる体制を整えることが目標です。
医療法人栄和会 泉川病院
長崎県南島原市深江町丁2405
TEL:0957-72-2017(代表)
http://www.izumikawa.or.jp